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うつ病における睡眠障害
うつ病における睡眠障害
不眠はいろいろな心身の病気に認められます。その現われ方によって、3つのタイプに分けられます。朝起きてたっぷりと眠った自覚がなく、睡眠不足のために日常生活で支障をきたして悩んでいれば、不眠症と呼びます。
不眠を訴えて病院を訪れる方の約20〜30%は、うつ病によるものと考えられています。うつ病では不眠が主な症状となり、その他の症状は目立たない場合もあるのです。そのため単なる不眠症と診断されて、睡眠薬のみが処方されることがあります。
その際には、うつ病が慢性化したり、悪化して、ときに自殺などの不幸な事態を招きかねません。
睡眠障害の3タイプ
入眠障害
熟眠障害
早朝覚醒
就床して寝入るまでに30分以上かかる。
眠りが浅いうえ夜中に何度も目が覚めて、ぐっすり眠れない。
普段の覚醒より2時間以上早く目覚め、その後、再眠できない。
就寝時から起床時までの睡眠の実態を客観的にみるには、脳波や筋電図、眼球運動などをあわせたポリグラフ記録を行ないます。その所見から睡眠段階は、覚醒、第1〜4段階、レム段階の6段階に分けるのです。
睡眠は一日の周期的な活動における休息の段階であり、人を無動な状態に保つのに役立っています。睡眠の経過をみると、ノンレム睡眠とレム睡眠という性質の異なった二つの睡眠が反復して現われます。レム睡眠は、体の活動を抑える作用をもった古い睡眠と考えられています。一方、ノンレム睡眠は、体温調節能力と一緒に発達し、大脳皮質の成熟とともに増えてきました。恒温動物の高いエネルギー消費を埋めあわせ、エネルギーを保存するための方法として進化したものと推測されています。
正常な睡眠では、入眠するとノンレム睡眠がまず現われ、約90分後に最初のレム睡眠が出現し、約10分続いた後、再びノンレム睡眠が出現します。約90分の周期で、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に現われるのです。この周期を睡眠周期と呼びます。睡眠時間を約8時間とすると、一夜に4〜5回のレム睡眠が出現することになります。
ノンレム睡眠のうち第3、4段階などの深い睡眠が睡眠前半に多く、レム睡眠は睡眠後半に多い傾向があります。明け方に向かってノンレム睡眠の深度が浅くなり、レム睡眠の持続時間が長くなります。
一方、うつ病の方は、なんらかの自覚的な不眠を感じています。この不眠は、うつ病の重症度に比例する傾向があるのです。自覚的な睡眠障害としては、入眠困難(睡眠の開始の障害)、夜間での頻繁な中途覚醒や早朝覚醒(睡眠の持続の障害)が認められます。うつ病では、なかでも早朝覚醒とそれに続く気分の日内変動(朝のほうが気分が悪い)が特徴です。
逆に、双極性障害(躁うつ病)におけるうつ病相では、場合によっては不眠ではなく、過眠(睡眠過剰)を認めることがあります。過眠のために睡眠時間が長いにもかかわらず、浅い睡眠しか得られなかったため、起床時に熟眠感は得られていないのです。とりわけ若い方に多く生じます。
うつ病の方の睡眠経過図で認められる主な所見
1
入眠潜時(入床から寝入るまでの時間)が延びて、さらに入眠時の中途覚醒が何回も起こり、総睡眠時間(実際に眠っている時間)が短くなる。
2
深睡眠(深い睡眠の段階)が減る。とりわけ一夜の睡眠の前半で減少が認められる。
3
レム潜時(入眠から最初のレム睡眠が出現するまでの時間)が短くなる。また一夜の睡眠の前半でのレム睡眠の時間が増える。
[1]
は睡眠の開始とその持続の障害を表わし、うつ病の方の自覚症状とも一致する所見です。
[2]
は睡眠の構築の障害を説明しており、うつ病の方では眠りが浅くなっていることが示されています。先に述べたとおり、深睡眠は一夜の睡眠の前半部で多く出現しますが、うつ病の方ではそれがひどく減るのです。
[3]
に述べたレム睡眠の異常は、うつ病で睡眠の特徴として重要視されています。
うつ病の方を中心に認められることから、うつ病と診断する際の生物学的な根拠の一つとしています。
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