良い樹は必ず細かい根が地中に深く広くはっています。根が丈夫な限り、樹は自然と伸びていくものです。ところが、いまの時代は結果を急ぐあまり、過程を大切にせず、地中の根をほったらかしにしておいて、地上の樹のことばかりに熱中しているように思えます。根が育たないのに樹が大きくなるということはないのです。あったとしても、細く弱々しく、北風が吹くとすぐに折れ倒れてしまいます。
見える世界は、その幾層倍の見えない世界により支えられ、そこに存在しています。

“小さな努力で大きな成果”というのが経済の原則のように見えますが、実は“大きな努力で小さな成果”が、結果的には確実ではないでしょうか。いまは人財の質が企業の質を左右します。そもそも人材育成は、小さな投資で大きな成果を期待するほど易しいことではありません。
人材育成ほど面倒で手間のかかることはありません。水をやり、肥やしを蒔き、光を当て、多くの手間が必要です。
よい作物を作るには、まず、大地をよく耕し、肥やさなければなりません。人をつくるには、心を深く耕し、研かなければなりません。
心田はいくら耕しても耕し尽きることはありません。